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テレビタレントに見る細分化の傾向と時代の流行


本コラムは、2002年に発表したものです



今回のテーマは、「テレビタレントに見る細分化の傾向と時代の流行」です。

先日、ネット業界の担当者数名と「ネット通販の変遷」といった内容について議論をしました。1つ例に挙がったのが、「一般には認知されていない新たな商品」をどう広めるか、流行を作れるかといったものでした。

企業や通販ショップにとっては、売上を上げるために「商品」や「サービス」を広めたい、あるいは流行にしたいと考えることはしばしばです。しかし、繰り返される”ブーム”の変遷を見ていると、どうやら商品やサービスを定着化させるにはブーム”にするより、”人気化”するほうが良いのではないか?と考えられます。

さて、これはどの様なことかと言いますと、まず市場で”唯一のサービス(または商品)”が市民に受け入れられたときには、ブームというものが到来します。しかし、これも市場の原理で、その後、類似物が増えてくると、多くのものにブームは消え、サービスを提供していた企業の売上は低迷します。これは廃れたというよりも、市民に”選択権”が与えられたことで、いわゆるサービスの細分化とともに売上が散漫したという側面を持ちます。

もっと分かりやすく、テレビタレントというものに置き換えて考えてみますと、今から数十年前、プロレスラーで人気の「力道山」という選手がいました。私はビデオや本でしか知りませんが、まだ一般家庭にテレビがそれほど普及していない当時、街頭テレビなるものにも多くの市民が同じ番組に集中したと聞いています。いわゆる、”ブーム”です。

しかし、当時、テレビ局が提供する番組は現在ほど多チャンネルではなく、他の例をあげれば、歌手の美空ひばりなどもそうでしょう。しかしその後、テレビが多チャンネルになり、タレントの数も増えてくると、タレントに光がなくなるのではなく、ユーザーの選択肢が増えることにより、「私は私」の志向が芽生えてくるのです。

ここで問題になってくるのは、当時、大変な人気を博したタレントは、長きに渡って有名ではないか、と。実は、ブームというのは一時ですが、”人気”は長く続くことができると考えています。その背景には幾つかの理由があるでしょうが、一つのキーワードは「生活密着」です。人間が生きてゆくことは、イコール「生活してゆく」ことですから、時代は変われども商品やサービスができるだけ「身近な生活」に密着しているほうが、時の流れの中で”ブーム”には巻き込まれるにせよ、”人気”を保持することもできる可能性を多くもっています。

では、「生活に密着」しない(本来はあり得ないですが)ものはどうか?

私は、この場合にはむしろ、”ブーム”を作ったほうが良いと考えています。そのブームは繰り返されますが、その過程で、「お得意様」を獲得してゆくことが売上を伸ばしてゆく方法であると思います。

ここで、面白い数年前の社会現象をちょっとお話しましょう。

数年前、若い世代には顔を黒く焼く「ガングロ」というのが流行りました。テレビなどを見ていると、若者はインタビューに決まってこう答えます。「他の人と同じじゃ嫌だから」。そう、この言葉の裏には、「私らしく」という自己主張が隠されているわけですが、ガングロは”ブーム”でした。挙って顔を黒くすることで日焼けサロンも次々と現れました。しかし、よく考えてみると、「私らしく」であったことがいつの間にかブームの中で「みんなと一緒」に変わっていたわけです。

こうなるとブームにはやがて陰が訪れ、待ちに待った「美白ブーム」の到来です。

仕事柄、都内を歩き回る機会が多いのですが、いまでは「日焼けサロン」の看板も少なくなりました。ブームで終わったからです。

ここで、必要だったのは「生活に密着」だったのではないでしょうか?

例えば、国民の多くが”日焼け”に関心があるとは言わないですが、個人的に通うボディビルGYMでは、”日焼け”している人間を数多く見ます。これは彼らがコンテストに出場するために必要だからなのですが、つまり、特定の対象者ではありますが、日焼けが「生活に密着」していたわけです。ブームと違って、その人気は、”繰り返されない”のが特徴です。むしろ、コンテスト前に日焼けするのは当然の出来事だからです。

こうなれば、現在でも細々と営業する日焼けサロンでは、その「生活密着」に関係したユーザーを新たに取り込むか、もう一度、ブームを作るなど、生き残る道は限られてきそうです。

繰り返されるブームの中で、自らの顧客を少しずつ増やしてゆくか、より生活に密着したサービスと結びつけ人気を高め、そして定着化させるか。前者は一時に大きな売上を上げることができますが、ブームが去れば大きなコストダウンも待っています。一方、後者は一度定着化させることができれば、長きに渡って比較的安定した売上を保持することが可能です。